序章

 広がる世界はただの闇。
 微かに聞こえる物音と頬を撫でる風が世界の全てだった。
 体が熱い。
 焼けるようなその熱さは心臓の音と同期して、周期的にこの身を焼く。
それは回数を増すごとに強くなり、そのあまりの苦痛に苦しげな息が漏れた。
意識が朦朧とするが、意識を失うことは許されなかった。
 逃れられない――生皮を剥がれるような苦痛を味わいながらも、
決して開放されないその熱さは続く――そして、
それは唐突に……あっけないほどすんなりと、消え去った。
 そして、安堵した体は当然の様に休養を求め、
あれほど強情にとどまり続けた意識は、あっさりと役目を放棄し眠りへと向かう。
 そこで前触れもなく理解する。
 これは『夢』なのだと。